映画の後は流れでカフェに入ることになった。カウンターで注文して席に座るや否や、零は「今日はありがとう…ほんとに楽しかった」と言って、目を細くして笑った。


「別に、どうせ今日で最後だろうし」
「それでも、嬉しかったから」


零はそう言って笑うと、注文したカフェラテを一口飲んだ。


「縁ちゃんが大学生になって一人暮らしをはじめるって実家を出てからも、ずっと好きで、会いたかった」

「だから零が好きなのは昔のわたしでしょ…」

「実際に縁ちゃんに再会してみて、昔とは変わったのはわかった」

「ほら、」

「でも、それでも縁ちゃんが好き」

「、」

「縁ちゃん。好き。大好き。俺と付き合って」


零の言葉が、静かなカフェの店内で凛と響いた。

真剣な表情の零と目を合わせることができなくて、目をそらして注文したブラックコーヒーを一口飲む。


「わたしと零は付き合えない」
「、なんで?」
「よく考えれば分かることでしょ。零はまだ18歳で、わたしはもうすぐ24になるの。周りに冷たい目で見られるにきまってる」


この前会社で、零の話をしたときの相澤の冷たい表情や、先ほどの若い男二人組のやりとりを反芻すると、心が芯から冷えていった。