今日のお出かけは、もちろん零から提案されたものだ。

わたしと零が再会した日、わたしの家に入ると言って聞かなかった零に「俺と週末デートしてくれるなら縁ちゃんの家に入るのは諦める」と提案をされ、それにしぶしぶ乗ったというわけだ。


結局、ショッピングモール内に映画館があるということで映画をみることになった。

館内の席に座ると、思ったより零との距離が近くて心臓がドキッとする。対する零は、暗い館内であくびをして目をこすっていた。


「…寝不足?」
「あ…ごめん。うん…昨日遅くまでレポートやってて」
「それはおつかれさま。てか零ってどこ大なの?」
「W大だよ」
「えっ超頭いいとこじゃん」


そこまで頭がよかったなんてびっくりだ。そういえばW大は、リオも通っていた大学のはずだ。皆すごいなあと感心していると、館内が真っ暗になって映画がはじまった。

携帯小説が原作のもので、高校3年間だけ付き合ったカップルが、社会人になって再会し、再び結ばれるという恋愛映画だ。

映画をみおえた零は目に涙を浮かべて「すっごいよかったね」と言って笑っていたが、わたしはそうは思えなかったし、涙のひとつも流さなかった。