「縁ちゃん、大丈夫?ごめんね、俺来るの遅くて」

「あ、ありがとう、零。大丈夫だよ。いやわたしが早く来すぎただけだから」

「むかつく。あいつら、俺の縁ちゃんにベタベタと!」

「ちょ、落ち着いて」

「一発殴ってやればよかった!」

「そんな物騒な…てか肩触られたくらいで」

「〝くらい〟じゃないよ!俺以外の男に指一本触らせたくないよ!」

「圧がすごいよ…。零。落ち着いて…」

「そりゃすごくなるよ!だって、縁ちゃんは俺の好きな人なんだよ?」

「っ」


唐突に飛び出した「好きな人」というワードにドキッとして言葉を失う。


そんなわたしに、零は口を尖らせて、
「縁ちゃんも縁ちゃんだからね。自分が可愛いって自覚して、危機感持って」
と、言った。


零の甘い言葉に、ぼっと顔が赤くなったのが自分でも分かった。顔が赤いのが零にばれないようにそっぽを向いて「分かったからほら、早く行くよ」と話を逸らす。



まだ会って早々なのに、こんなにも零に振り回され、ドキドキさせられてしまうなんて、わたしは今日一日どうなってしまうのだろうか。