「ねぇ!いい加減やめてよ!!」
体育館に茜ちゃんの声が反響した。みんなが振り向く。
「は?何もしてないけど?」
「してるよ!どう考えてもあたしのことハブってんじゃん!」
3秒ほどの沈黙。
「別に。ハブるつもりねーし」
「なに言ってんの?嘘じゃん。」
「・・・。は?」
「悪いけどウチ茜の味方なんだよね」
「は?え?」
「最初の頃は美羽が怖かったから仕方なくハブるふりしてたけどさ、本当は凄い嫌だったんだよね。なんか妬みみたいじゃん?」
「でも悪口言ったり…。」
「してたけどさ。最近茜の頑張ってる姿見たらそんなよくないって思って。」
「偽善者、だよね。」
「ちょ、茉夏??」
「ごめん美結、止めたい気持ちも分かるよ。1年生の話に入らない方がいい。それは分かってる。けど、茜ちゃんのためにもちょっと言わせて。」
「う、うん」
「今みんなが美羽ちゃんを責めるのは間違ってるよ。人間気持ちが変わっちゃうのは分かるけど、そこから急に茜ちゃんの味方に変わっちゃうのはおかしくない?茜ちゃんが一番キツイとき、誰も助けてあげなかったでしょ?それじゃ茜ちゃんもみんなのこと信じられないじゃん。空気読めてないことは分かってるよ。でも、ね。ちゃんとまずは茜ちゃんにみんな謝るべきだと思う。」
痛く、冷たい空気がぴんと通る。キリキリ心が痛む。
「そ、だよね。茜、ごめん。今まで無視したりして。」
香步ちゃん…!
「香步…。いいよ。」
「茜!マジごめん!」
「ウチが悪かったァ!!」
「ご、ごめん。妬んでた。」
「美羽ちゃんまで…。」
うちらはそっと部室に移動する。

「もう茉夏!ヒヤヒヤするじゃん!」
「あはは、ごめーん」
「いやいやマジで!うち、めっちゃ不安なったんやけね!」
「いやぁ、だって自分がもしそうだったら、って考えたらさ。」
「まぁ、ね。」
「茉夏ってそんな空気読めんの?!っち思わず引いたわ〜」
「え、ちょ、引かんでよ!」
「あはは〜すまんすまん!」

部室の扉からそっと1年生の様子を伺ってみる。茜ちゃんと、みんなのキラキラした笑顔。この時私はふと、私たちが引退したらどうなるのだろう、と考えてしまった。