「リズさま…」
「え、あっ、ごめんなさい…。違うの、これは」
思わず零れてしまった涙。
そのタイミングで紅茶を運んできたキースが目を見張る。
私は慌てて涙を拭った。
ああ。こんなところ見せたくなかったのに。
そう思ったところだったのに。
いけない。
なんでこんなに弱気になってるんだろう。
アルさまは変わらず側にいてくれようとするのに。
「リズさま、無理に笑わないでください。頑張りすぎてほしくないのです」
「キースさん」
「貴方は、庶民の出であることを追い目のように考えておられるのを知っています。だからこそ、今回の事で焦る気持ちがあるのもわかっているつもりです」
「……」
「ですが、貴方が庶民の出であることは我々にとっては大した問題ではないのですよ。貴方という人間に皆が惹かれ、受け入れているのです」