「私は、アルさまのお気持ちが嬉しいんです。どんな立派なものより、アルさまが私のために選んでくださった気持ちが嬉しいんです」
「気持ち…」
「はい。例えば、アルさまが私を想ってくれるものなら、道端に落ちている小石でも嬉しいですよ」
そう言って笑う。
大げさだとは思うけれど本心だ。
「…そういうものか」
「はい。そういうものです」
「俺の誕生日には、誰もがこぞって高価なものを贈りつけてくる。誕生日とは、そういうものだと思っていた」
「高価なものが悪いというわけではありません。気持ちが大事なのだと、私は思います」
王さまへの贈り物。
それが高価なものになるのは仕方のないことなのだろうか。
でもきっと、アルさまは敏感に感じていたのだろう、その贈り物の真意に。
私はもう、王族の世界が真っ新なものばかりではないと知ってしまっている。
「…でも、確かにそうだ」
「え?」
「俺も、一番嬉しかったのは、どんな高価なものでもなく、何気なく渡されたこの万年筆だな…」
そう言って胸ポケットから出した万年筆は、使い古されたように装飾が掠れていて、それでいてとても大切に使われていることがよくわかるものだった。