お、書いてんの?と、かいとが近づいてきた。

さっき驚いて落としたデッサンが、
床に散らばっている。

かいとが拾おうとしたのを見て、慌てて

うわ!まだ、途中だから!と、
拾い集めようとしたら、かいとの手が
一瞬触れて。

あっ…と2人とも手を離した。

顔を見合わせて固まってしまった姿を見て、

2人とも、なにベタな照れ方してんの?
俺、邪魔?

と、春樹が言った。


な、なに言ってんの!
なに言ってんだよー。

かいとと声がかぶって、また顔を見合わせる。

はいはい。気があうようで。と、
また笑った。

春樹のやつ…。
もうパニックになりながら、必死で
平常心、平常心…ととなえる。

デッサンをかき集めるあたしを、かいとが
手伝ってくれて。

なんか…ごめん。
できるまで、見られたくないよなー。
と、言ってくれた。

優しい…。
かいと、こんな優しかったのかぁ…。

つい、顔を見ていると…

ん?前髪伸びてきただろ?と、
少し得意げに言うから。

そうだね。
でも、短いのも似合ってるよ。
と、言ってしまった。

また顔が赤くなるかいとを見て、
内心、あ、やば。と、思った瞬間。

はいはい。もうラブラブタイムは
おしまいですよー。と、春樹が言って。

ガヤガヤと、女子たちが入って来て。

おはよー。
きゃー!さき!
可愛いじゃん!どうしたのー!?
と、取り囲まれ、かいとと春樹は
じゃれあいながら離れて行った。


かいと…。
あたしの心は、かいとの照れた顔で
いっぱいになっていた…。