「えぇ。これのおかげでこの時代へ来れたんです」




「大島はなんでここへ来たんだ?」




「未来を救うためです。それが、私にしか出来ないことなんです」




「どうするんだ?」




「人間の心を……得なくては」




「どういう意味だ?」




「私には、何も」




「……」




「あと分かっているのはあと一年という私の寿命です」





「「「「!!!!!!」」」」




「ちょっと、待ってよ!!一年って…どういう事??」




「時空移動をした者の残りの時間。未来を救おうが救えまいが私は一年以内に死ぬんです。ペンダントを使ってここへ来た人達は何人もいます。でも、みんな死にました」




「っ」




「最後に味わうのは孤独と絶望。そして死です。自ら死を迎える者もいました」



「っっ……なんで、なんで文がっ」



「私も、なんで私なのってずっとおもってました。でも、私じゃなきゃ……皆に出逢えなかった」




「文……」


「今まで黙っていて本当に申し訳ありませんでした…こんな私でも良ければ、ここに居させてください」




そう言って頭を深く下げた。




「大島。約束しろ。必ず、お前の未来を救うと」




「っっ……ひじか…たさんっ……ありがとうございます」




そう言うと、土方さんは優しく微笑んだ。


今日は朝から何やら騒がしかった。




様子を聞きに土方さんの部屋を訪れたが、彼はいなかった。




その時、外から……いや、庭の方から苦痛な叫びが響いた。




「あ゛あ゛ぁぁぁああぁぁ」




「な、何?!」



そこを原田さんが通ったので何があったのか聞いてみた。



「いや、えーと……まぁいいか。拷問だよ」




「拷問……?」



「古高のな」



その時、彼が新選組を大きく揺るがす重要人物だった事を思い出した。



私は雷に打たれたような衝撃を受け、急いで拷問部屋へ駆け込んだ。



ガラガラ……



うっ……酷い匂い。血なまぐさく、空気がどんよりしている。



「おい、大島。何しに来た。出ていけ」



「土方さん。拷問をしてどのくらい経ちますか」



聞かずとも土方さんの疲労具合から見て、相当な時間ここにいることはわかった。



「聞いてどうする」



「私にやらせてください」



「なっ……ダメだ。」




「10分間だけでいいんです。やらせてください」



「っ……10分だからな」



「ありがとうございます」



私は土方さんを部屋から退出させ、古高に向き合った。


古高は、天井からロープで吊るされ、足の裏には釘が刺さり、その上にロウがついていた。



「誰が来るかと思いきや、ただの小娘か」




「よくここまで耐えましたね」




「はっ。なんだそんな事を言いに来たのか。」




「いいえ」




そして私は外にいる土方さんに聞こえない程度の声で言った。




「強風の日、御所に火を放ち佐幕派公卿の中川宮を幽閉、京都守護職の松平容保以下佐幕派大名を殺害し、天皇を長州へ連れ去る……」




「っ!!お前……まさか仲間か?」




「そう見えますか?」




「……では何故知っている」




「さぁ?」




「何者なんだ、お前は」




「秘密です。もうあなた自身の言葉で洗いざらい、吐いて頂けますよねぇ?」


古高が吐いたことにより、新選組で緊急会議が開かれた。そして、会合は池田屋か四国屋で行われると推定された。



「おい。お前どうやってあいつを吐かせた?」



土方さんが不思議そうに聞いてきた。



「ただ脅しただけです」



「そう、か……今夜ここを発つ。お前は」




「私も行きます」




「馬鹿言うな。此処で待っていろ」




「今回ばかりは土方さんの命令でも聞き入れられません」




「っ………きっと今夜のは大騒動になる。お前、こんな所で死ぬなよ」




「はい、ありがとうございます」




今夜私も着いていく理由はひとつしかない。沖田さんを救うため。次は私が守る番だ。



「土方さん、本命は四国屋です。腕のたつ方達を四国屋へ。私が来たことによって池田屋になったかもしれません。ですから私を含め少数で向かわせてください」




「なぜそんなことがわかる」




「私がどこから来たかお忘れですか?」




「っ………近藤さんは池田屋へ行かせる。万が一の事を考えて斎藤もな」




「近藤さんは任せてください」




「頼んだぞ」



本命は、池田屋。そんなのわかってる。ここで真実を言ってしまったら沖田さんは池田屋へ向かわずにはいられなくなる。そんなのだめ。



近藤さんには私が傷一つ付けさせない。




あっという間に日も暮れ、皆が浅葱色の羽織をまとった。




暑いな。確かこの日は記録的猛暑日だったっけ。




「沖田さん、気をつけて下さい」




「文も」




「はい」