僕は満月の夜、桜の木の下で不思議な少女と出逢った ────
今年も桜が綺麗だな〜
満月の明かりに照らされて、普段見る桜とは少し違って、より一層美しく見えた。
ふと足元を見ると、キラキラと光る小さな石のような物を見つけた。
「なにか落ちてる?」
手に取ってみると、それは七色に光る結晶の首飾りだった。
「何だろこれ……綺麗だなぁ」
「それ私のなんです。返してください」
いつから居たのか、木の後ろから少女が1人、顔を出した。
「君誰?」
「名乗る程の者じゃないです。それ、返してください。大切な物なんです」
「いいよ。それはともかく、夜女の子が1人でうろついてると狼に襲われちゃうよ?」
「私はそんなたまじゃありませんから」
「ふーん」
一見冷静に見えるけど、少し焦っているようにも見えた。僕が拾った首飾りを返すと、彼女は嬉しそうに笑顔を作った。
「っ……/////」
今が夜でよかった.....今僕絶対顔真っ赤だよ。会ったばっかだぞ。向こうの顔だってよく見えないのになんだよ、、
「そんな、まさかね」
「何がまさか?」
つい口に出てしまったらしい。
「いや、なんでもないよ」
「あー……独り言ですか。気持ち悪いですね。」
「な゛ぁああ?!?!そんなわけない!!」
「ぷはっ!!!ムキになってるっ!」
「うぅうるさぁあああい!!!」
こんな奴好きになるかっ!!あー勘違いした僕が馬鹿だった!!それに僕は女なんか微塵も興味無いし?!
心の中でそう叫ぶ僕を見て、彼女は本当に楽しそうに笑っていた。
まぁでも悪い子じゃ無さそう。
「ていうか、早く家帰りなよ」
「あー.....そうですね」
その質問に対して彼女は急にオドオドし始めた。
「まさか、家がないの?」
「えーと、まぁ」
「追い出された?」
「それならいいんですけど…ちょっと帰れなくなっちゃって....迷子みたいな?」
言葉を探すように話していたのは気になったけど、困っているのは確かだった。
「一旦僕のとこおいでよ」
「え、いいんですか?」
「多分ね。土方さんに聞いてみるよ」
そう言った瞬間、彼女は目を丸くした。
「ひ、じかた……??」
「うん。土方歳三」
「あ、嘘……じゃあ、あなたは?」
「僕は沖田総司。壬生浪士組さ」
「っ………新選組……」
彼女はそうつぶやくと、顔色を悪くした。
「新選組?なにそれ。………顔色悪いけど、具合悪いの?」
「なんでもないです。すみません」
「おんぶしてあげようか」
「いえ、大丈夫です。ありがとうございます」
「ほんとに…?」
「ちょっと疲れただけです、きっと」
疲れているだけなのか、はたまたただの変人なのか。僕は後者にかけるけどね。
「じゃあ行くよ」
「あ、はい」
屯所 ────
「君は寝てていいから。僕は土方さんに話してくる」
「ありがとうございます」
・
・
・
・
「.....というわけで、彼女をここに置かせて下さい」
「総司がそこまで言うならしょうがねぇ」
「けど、女に興味の無いお前が、何故そこまでそいつにこだわる?……まさか、情がうつったのか」
そうニヤニヤ言ってくる土方さんはこの世で1番気持ち悪い。うぜー。
「今失礼なこと考えただろテメェ」
「やだなぁ土方さん。僕は一言もそんな事言ってないのに……もしかして自覚してるんですか?」
「あ゛ぁん?!」
「しーっ!!今は夜中なんですから静かにぃ」
「ちっ。うぜぇ」
ふ〜♪やっぱり土方さん弄りは面白い。
「土方さん、彼女の役割りはどうします?」
「取り敢えず小姓でいいだろ。お前の」
「やったぁ〜〜」
「明日お前非番だろ?教えてやれ」
「はぁ〜い!!じゃ、おやすみなさーい」
返事も待たずに部屋を飛び出すと、既に彼女は僕の部屋で寝ていた。
寝顔も可愛いな.....こんな無防備に寝ちゃって。襲われちゃうよ?
首元を見ると、さっきの首飾りがぶら下がっていた。
そんなに大事な物なのかな。確かに綺麗だし、この辺じゃ売ってなさそう、というか見たことすら無いけど、母親の形見とかかな?
僕はいつもより少し早く起きた。隣でまだ寝ている彼女の顔をじーっと見つめていると、うっすらと目を開けたと思えば急に叫んだ。
「うぎゃぁっ?!?!」
変な声っ!!
「なにその声〜」
「え?!沖田さん!何でここに?」
「おはよう。ここ僕の部屋で僕の布団だからね」
「え!!!沖田さんの部屋?!布団?!?!すすすすすみませんっっ!!」
「いいんだよ〜僕が許したんだし」
「あ……...すみません、」
「謝んなくていいって。それとご報告〜!!君は今日から僕の小姓だよ!」