その日は大好きな本の新刊を買いに
その本屋へ。
彼は本の品出しをしていた。
それも、私が目当てにしていた本だった。
胸のドキドキを抑えようとして、
本棚の後ろに隠れた。
そして私は息を整えると、
彼に近寄っていった。
「あの、」
「?…あ、いらっしゃいませ」
またにへっと笑った。
顔が熱くなる。たぶん自分でもわかるくらい
真っ赤だ。
「何かお探しですか?」
そう聞かれて、私はおずおずと答えた。
「その新刊、いただいてもいいですか…?」
「ああ!すみません、気づかなくて。はい、お買い上げありがとうございます」
彼はそういって陳列し終わったものではなく、箱から取り、きれいなものを渡してくれた。
「あ、ありがとうございます…。」
その本をぎゅっと握りしめ、私はそのままお会計を済ませ、店を出てきてしまった。