時間が経つにつれて、早乙女彩乃への怒りがどんどん膨らんでいき、もはや殺意さえ覚えていた。

『おい、大丈夫か? おまえ、顔ヤバいぞ?』

いつの間にか戻っていた東吾が、俺の顔を覗きながらそう言った。

『あ? 大丈夫だよ……っていうか、何でおまえ菜子の部屋を見張ってないんだよ! アパートだって調べられてるかもしれないだろ? 菜子になんかあったらどうするんだよ! もういい、俺が行く!』

俺は車のキーを持って立ち上がった。

『待て、樹! 彼女にはちゃんとSPを手配して、こっそり警備させてるから大丈夫だよ。とにかく落ち着けって』

『なら、早くそう言えよ』

深くため息をつきながら、再び腰をおろした。
苛立ちは増すばかりだ。

『悪い、東吾。……俺、やっぱ無理だわ。菜子に手を出した女と結婚なんかできねえ。全部ぶっ壊していいか?』

『ああ。腹くくったんなら思い切りやればいい。社長も同じ考えだ。全部押しつけてすまなかったとおまえに伝言だ』

東吾がふっと笑った。

『そうか。じゃあ、遠慮なくやらせてもらうよ。ひとつ考えがあるんだ。一か八かだけどな』

こうして俺は、東吾を連れて『ハピネス社』のあるアメリカへと渡ったのだった。