言われている言葉の意味が理解できなかった。

「な、何言ってるんですか。どうしてそんなこと言うんですか! そんな…彼女を庇うような言い方……」

涙がポロポロとこぼれ落ちる。

「ごめんな、菜子。ほんとにごめん。でも……俺が守りたいのは彼女だから」

「そんな………」

「悪いけど菜子を今日付けで解雇する。白崎とももう接触しないで欲しい。その代わり、おまえには3億払うから。寄付で集めた1億5千万に手切れ金の1億5千万。これで納得してくれないか?」

「そんなこと、樹さんが言うとは思いませんでした」

「仕方ないだろ? 大事な女を守る為だ」

樹さんは強い目をして私に言った。

「そうですか……」

「じゃあ、金は給与口座に振り込んでおくな」

「…………」

悔しくて、私は泣き崩れた。
樹さんはそんな私に構うことなく、スマホを片手に立ち上がる。

「東吾、悪い。菜子を家まで送ってやってくれないか? ああ、すぐに来てくれ」

そのあとの記憶はあまりない。
気づけば朝になっていて、見慣れたアパートの天井をただボンヤリと見つめている私がいた。