「これからあんたの恥ずかしい動画を撮るんだよ。依頼主の要望だからな」

男はスマホを私に向けてニヤリと笑った。
あまりの恐怖に背筋がゾッと凍りつく。

「い、依頼主って……彩乃さんのことですか!?」

「さあな……名前は知らないけど、依頼主からあんたに伝言だよ。『会社を辞めて彼の前から早く消えろ。さもなければあんたが犯されてる動画をネットに投稿してやる』だってさ。ハハ……おっかない女だね」

まさか彩乃さんがこんな恐ろしいことをするなんて。
私は言葉を失った。

「そういうことだからさ。少しの間大人しくし我慢してろよ」

そう言って、スキンヘッドの男が私に覆い被さってきたその時だった。

「おまえら何やってんの? これ犯罪だよ?」

突然、車のドアが開き、カメラのフラッシュがピカッと光った。

「あ? おまえ何撮ってんだよ!」

私を押し倒していた男は怒鳴り声を上げながら車から飛び出して行った。その隙をついて私も車から降りる。

すると、そこには数人のボディーガードを引き連れた白崎社長が立っていた。

「白崎社長!?」

「菜子ちゃん、もう大丈夫だからね」

ニコリと微笑んだ白崎社長のすぐ脇で、屈強なボディーガード達がスキンヘッドの男を取り囲む。

「おい! 逃げるぞ! 早く車に戻れ!」

さすがに敵わないと思ったのか、運転席の男がエンジンをかけながら叫んだ。

「クッソ! 覚えてろ!」

スキンヘッドの男が助手席に駈け込むと、車は猛スピードで走り去って行った。