そんなことがあった日の午後、彩乃さんから私あてに電話があった。

彼女の用件は、秘書である私に樹さんへのクリスマスプレゼントを一緒に選んで欲しいというものだった。

とても複雑な心境だったけれど、立場上断る訳にもいかず、結局彼女の買い物に付き合うことになってしまった。

『ありがとう、綾野さん。それでは今夜7時、父の会社のものをそちらに向かわせますので、向かいにある公園の駐車場に来て下さいね。車は白のセルシオです。くれぐれも樹さんには内密でお願いします』

電話の向こうの声は明るく弾んでいた。


そして、夜の7時。
憂鬱な気持ちを引きずって約束の場所へと向かった私。

「こんばんは。どうぞ乗って下さい」

白のセルシオを見つけ近づくと、運転席からサングラスの男が顔を出した。

言葉は丁寧だけど、風貌はどう見てもチンピラだ。

警戒して乗るのを躊躇していると、後部座席からスキンヘッドの男が降りて来た。

「いいから、乗れよ!」

腕を掴まれ、無理やり車の中へと押し込まれた。

「キャ! 何するんですか!!」

「騒ぐんじゃねえ! 命が惜しければ抵抗するな」

後部座席のドアがバタンと閉まり、車は猛スピードで走り出す。そして、そのまま人気のない倉庫の駐車場へと入って行った。

「いったい何が目的ですか」

震えながら問いかけると、運転席の男がエンジンを切って振り向いた。