「ああ。ちゃんと連れて行くし、俺が責任もっておまえの『玉の輿婚活』をサポートしてやる。ただ……その代わり」

樹さんはちょっと言いずらそうに、鞄から書類を出した。

「悪い。この同意書にサインもらってもいいか? うちの秘書が煩くてさ」

「同意書?」

樹さんから渡された書類に目を通す。
要は【両者に過失があったことを認めて、今後いっさいの金銭的要求などをしないこと】を私に約束させるものだった。

そんなつもりなんて全くなかったけれど、代理人の弁護士の名前まで載っているから、私はよっぽど警戒されているようだ。

「分かりました」

そう言って同意書にサインして渡すと、樹さんは「ごめんな」と言って申し訳なさそうにしまった。

「今、お茶入れますね」

ひと息入れようとこたつから立ち上がると、樹さんがギョッとした顔でこちらを見た。

「いや、あのくそマズいお茶なら遠慮しとく」

樹さんは首を左右に振り全力で拒否をする。

「くそマズいお茶って……。どくだみはすごく体にいいんですよ? 祖母はドクダミ茶のおかげで100まで元気に生きられたんですから」

「まあ……体にいいのは認めるけど、アパートの裏に生えてたやつだろ? おまえ女なのによくそういうの平気だな」

「よく洗ったので大丈夫ですよ。樹さんこそ無人島じゃ絶対生きていけないタイプですよね。まあ、お坊ちゃまだから仕方ないか」

なんて、仕返しにちょっと煽ってみると、樹さんはムキになって言い返してきた。

「分かったよ。そこまで言うなら飲んでやる。ほら、早くよこせ」

「はいはい。今入れてきますね」