成人式は、たくさんの人たちで溢れていた。
昔から変わらない懐かしい顔
昔から変わらない懐かしい声
見違えるように綺麗になっていく友達
垢抜けた男の子たち
そのキラキラが、懐かしさを彩っていた。
それは、不思議な感覚だった。
わたしは、
彼が近づいてくるのが
わからなかった。
その他大勢の背景でしかなかった。
その瞬間までは。
「あ」
そう言ったのはナナちゃんだった。
中学生の頃ずっと仲が良かったナナちゃんは、スッキリしたブルーの振袖を揺らしながらわたしに耳打ちをした。
「あれ…斉藤九郎[さいとう くろう]だよ」
「え?」と言おうとしたけど、
間に合わなかった。
ナナちゃんが指差す方に視線を移すと、
わたしの視界に
こっちを見やる彼の全身が写って
「久しぶり」
そう声をかけられてしまったから。