「二人とも、見苦しい姿をお見せするのはやめなさい」



この状況で一番冷静なのは、やはりこの店の大黒柱的存在であり、マスター的存在のお爺さん。


完全な傍観者になるのではなく、程よいところで話に入っていく。



「失礼しました。結城さん。こちらがコーヒーです」



シンプルで、スタンダードなコーヒーにも見えるけど、この人が淹れたコーヒーと考えると、なんだかとても美味しいものだと感じられる。



「申し遅れました。
わたくし、五十嵐 七兵衛(いがらし しちべえ)と申します。強そうな名前でしょう?
こんな自分ではありますが、ここの喫茶店のマスターをしています」



「五十嵐、さん」



聞こえも強いけれど、字面も十分すごい。
昔の将軍のような名前で怖そうだけど、この感じを見るかぎり、そんな様子は見受けられない。きっと、良い人なのだろう。



五十嵐さんの自己紹介が終わり、次に手をあげたのは、隣にいる超イケメンの八雲さんだった。



「宇田川 八雲(うだがわ やくも)です。結城さんと同じ高3です」



八雲さんは、改めてフワフワしていて、常にマイナスイオンを発し続けている人だと思う。