ーカランコロン
喫茶今宵の中は、自分が想像する喫茶店よりも、シンプルなものだった。
L字型の木製カウンターに、ソファ席が四つと、赤い椅子。
『和』を彷彿させる店のデザインは、日本人である自分の心を安心させる。
「どうぞ、お座りください」
お爺さんはカウンターの真ん中の椅子を引き、カウンターの中へと入っていく。
軽く会釈をして席に座り、辺りを見回す。
喫茶店にしては、こじんまりした空間だけれど、この店のコンセプトにしてみれば、全く違和感がない。むしろ、落ち着く。
ふう、とカウンターの方を向き直ると、イケメンが隣に座っていることに気づく。
「わっ!」
「あっ、ごめんなさい」
小学生くらいの女の子も、そのイケメンの隣の椅子にチョコンと座る。
「そういえば、まだ名前、知りません」
隣に座ったイケメンは、相変わらずの笑顔で、わたしに微笑んだ。
イケメンに名前を言えと促されたわたしは、一度椅子から立ち上がり、三人全員の顔が見えるところに移動した。
「そうでした。
私、結城 明日香(ゆうき あすか)と申します。高3で、知り合いの紹介で、今日こさせて頂きました」
一通りの自己紹介を終え、元いた椅子に戻る。