「大丈夫ですか?」


そのイケメンは、ポカンとした顔で、私に手を差し伸べてくる。



こんなイケメンが目の前に現れることなんて、そうそうなかった自分の人生。



男の人の手に触れることへの抵抗があり、差し出された手を避けるように、地面に手をついて、立ち上がる。



「あっ、手が」


「大丈夫ですよ」


「すいません、ぼくのせいですね」


「否定したら、嘘になりますけど、大丈夫です」



「いやいや、せめてものお詫びに、一杯奢りますよ」



ふと、イケメンが身につけている緑色のエプロンの片端に、『喫茶今宵』とプリントされていることに気づく。



「あ、従業員の方で?」



店の中から出てきた時点で、そういうことだろうと、なんとなく察しはついていたが、やはりそうだったらしい。



「お忙しいのなら、遠慮は結構です。
また後日、お越しいただけたらそのときに」



じゃあまた今度でと断り、そのまま逃れようとしたその瞬間、もう一度、喫茶店のドアが開いた。