その後、せつ子さんから詳しい話を聞き、改めて依頼を受けてくれるのか否かを尋ねてきた。
「未練解消のお手伝い、大歓迎ですよ。
喫茶今宵の面々にお任せください」
五十嵐さんの言葉に続き、佳穂さんが頷く。
「未練を消し去ってくれるんですよね?」
せつ子さんの期待混じりの声に、五十嵐さんが答えようとしたのを、佳穂さんがさえぎった。
「いくらわたしたちの力を使ったって、その霊がどう思っているか。もし、もう一度会いたいのなら、最後に頼るべきはわたしたちではなく、己の心です」
えらく正論な答えに、せつ子さんも唾を飲み、真剣な面持ちで頷く。
「分かりました。
それでは明日の朝、またこさせていただいてもよろしいでしょうか?」
「ええ、お待ちしております」
せつ子さんは席から離れ、出口へと向かおうとする。そこで止まり、振り返ってわたしたちに聞いた。
「あ、忘れてた。
あの、やっぱりこういうのって、高くなっちゃうんですかね?」
そう、価格設定。具体的な数値化が難しい仕事内容に対して、いくら取るのが正解なのだろうか。
よくよく考えてみれば、霊に金銭の受け渡しができるのか、まずそこからだ。
「結構ですよ。その代わりと言ってはなんですが、うちのコーヒーを一杯召し上がって頂ければ」
お金の代わりに、喫茶店の武器である商品を飲んでもらう。それで代金は免除。
「そうですか、良かったです。
じゃあ、また明日。こさせて頂きます」
せつ子さんはそう言い残し、店を出ていった。