「それじゃあ、せつ子さんも?」



最初に、リアクションは取りすぎない。そう心に決めたはずなのに、いざその現実を目の前に突きつけられてしまうと、やはり、〝同情〟の感情が働いてしまう。



「ええ、まあ。
買い物に行ってる途中で、トラックに轢かれてぽっくり」



けれど私の〝同情〟とは裏腹に、当事者であるせつ子さんは、重く受け止めすぎず、明るく話した。



「もうさ、死んでから着替えられないって知っていたら、もっとオシャレしてきたのに」



「とてもお似合いですよ」



不自然にダサい格好も、近所のスーパーにちょっと出かけるだけだからで、死後は着替えられないってことが原因だった。



「霊になってからは、何日くらい?」



まだこの店の仕組みも、霊の仕組みも、慣れていないし、分かることも少ないけれど、話を聞くことはできる。そこから三人がなにかを分かってくれたら、結果オーライだ。



「二週間弱ですかね。まあ正確な日数は、私にも分からないわ。ただその辺をふらふらしてただけだし」



「もともと住んでいた家には、帰られましたか?」



五十嵐さんは真剣な顔つきで、せつ子さんに伝える。



「何度も、あの家の扉を叩こうとはしたんですけど、最後の一歩が踏み出せずに。それで、最後の手段として、こちらに頼ることにしたんです」