「人間は死ぬと、別の世界に行きます。結城さんも一度は、そう考えたことがあるでしょう」
五十嵐さんの言葉に、わたしは首を縦に振る。
「けれど、ある種の人間は、この世に魂がのこり、中途半端に体が残ってしまうんです」
「ある人間?」
「はい。それは、この世に思い残すことがあり、きちんと成仏できなかった人間を指してます」
成仏できなかった霊が、自身の未練を解消するために、この喫茶店にやってくる。そういうことだろう。
「そしてその霊は、一部の人間にだけ、みることができる。
そして、偶然にもあなたは、その貴重な能力を持ち合わせていた」
初めて知った。それじゃあ、今までもその霊を、普通の人間として見ていて、それになんの疑問も感じなかったってことになる、
「わたしのような人間は、貴重な人材なんですか?」
そんなにポンポンと霊がみえる人は現れないだろうし、五十嵐さんも一部って言っていた。
「確かな統計ではありませんし、なにせ、自分の能力、体質に気づいていない人もいます。なのでこれはあくまで、参考程度にですが、どこかで百万人に一人の確率だと聞いたことがあります」
「それってじゃあ、百万人に一人の特別な人たちが、ここに四人集まったってことですね?」
わたしの驚きの言葉に、八雲さんは、落ち着いた笑いで、わたしに返した。
「まあ、そういうことになりますね」