音のした入り口の方を向いた。



「いらっしゃいませ」



髪を後ろで結び、ダボっとしたトレーナーに、ダボっとしたズボンを履いた女性が立っていた。



「今、やってますか?」



「ええ」



五十嵐さんは、ニコッと女性に微笑んだ。



わたしは、その女性を真ん中に迎えた方がいいと考え、椅子から離れた。



「どうぞ、お座りください」



その女性の方は、軽く頭を下げて、わたしが座っていた椅子に座った。わたしも席を一つずれて、その女性のとなりに座る。



「ねえ、七兵衛」



不意に、佳穂さんの声がした。
五十嵐さんに声をかけ、わたしの方をあからさまに見ながら、なにかを合図した。



五十嵐さんも気づき、その声に反応する。



「ああ、さあ?
どうなんでしょう」



となりのとなりにいる八雲さんも、わたしをじーっと見ている。なぜこんなにも、ジロジロと見られているのかは、分からない。


けれど、今はそれを突っ込む時間ではない。


となりにいる女性が、五十嵐さんに何か用があるようだ。



「あの、お願いしたいんですけど」



「チラシを見てのご来店ですか?」



五十嵐さんの落ち着いた声が、店中に響き渡る。