「雨寺は肌が冷たいな」


「んっ…それは、雨にあたったから…」


その言葉とは裏腹に、先輩の手はとても
大きく、とても温かかった。


体温が熱を帯びて、冷たい私の頬に
じんと伝染するこの感覚が心地いい。


「ッ」


しかし、先輩の手が急にピシリと止まれば、
次第に体温が離れていくのが分かった。


……?


「あー…、だめだな俺」


ハッとした後、彼は項垂れるようにそう
言って、手を自分のうなじに当てていた。


「??」


彼の言動に理解できず、ただただ眉を細め彼を見ていれば、彼はガラス張りの方を見ながら、ぼそりと呟いた。


「本当はこういう事、…てか、
この状況事態避けなきゃだめなのにね」


────と。


「……」


…どうして?


どうして彼らはこんなにも唐突なんだろう。


特に伊月先輩は距離の測り方が全く
読めない。


近過ぎたり、かと思えば遠かったり、
いつもそれは突然で。



どうして避けなきゃいけないの?



聞きたくても、あえて私は問わずに一度
下を向き黙り込めば、再び口を開いた。