「それはこっちのセリフ」


「どうしてですか?」


「物静かで大人しそうなのに、
案外馬鹿だから」


「なっ!」


「カイロを貼っては慌てて外したりして。
それで今日はお寝坊さん?」


「~~~~~っ」


少し笑っただけなのに、そんなに
言わなくてもいいじゃないか。


私はふつふつと湧き上がる羞恥心と
怒りで、キッと先輩を睨んだ。


「そ、それは先輩もじゃないですかっ!」


私も対抗して言い返す。


「俺はいーの」


なんだその理由は。


そんな言葉で私が納得するとでも思っているのだろうか、と反論したいところだが、きっと自分勝手な理由はいつしか気力負けしそうだと思った。


私は一つ、ため息をこぼせば、
ぼそりと呟いた。


「…先輩のばか」


「え?なに?」


「……なんでもないです」


………。


先輩というステータスはこういう時に
後輩を黙らせられるからずるい。


…まあ、彼の性質にもよるけど。


なんて思いながら頬を膨らませれば、
ふと先輩の指を見た。


!!


「先輩、指に血が…」


私がそう言えば、彼は「ああ」と言って、
手を引っ込めた。


「さっき引っ掻かれたやつだと思う、
まあそのうち治るよ」


…なんて適当なんだろう。


浅い傷だとは言え、私がそうさせてしまったのには違いなく、私は急いでリュックの中のポーチを取った。


「なにそれ」