次から次へと目を疑う事が連鎖する
というのは初めて見る光景だった。


「──…」


それは部員の誰もが思い、突然の出来事に
理解が追いつかなかった。


それはもう……私が一番……、


「り、理沙…?」


「っ!」


私の掛け声により、理沙はハッとして、
またあの時の顔をした。


何かに脅える様な、恐ろしく動揺した…
そんな顔を。


気がつけば、理沙は私の手を掴む伊月先輩の手を思い切り払いのけ、私たちを引き剥がした。


「ど、どうした?竹内」


「いやいや何?びっくりしたわ」


少し焦り交じりに笑う部員たちも
どこか重苦しい空気を察していた。


「……」


払いのけられた伊月先輩といえば、
相変わらず考えの読めない無気力な表情で。


ただ静かに、口を閉ざしていた。


その絵図は何とも奇妙で、
何だか怖かった。


そうしてようやくそれを打ち消して
くれたのは、


「お前らまだその遊びやってたの〜?」


「佐藤先輩…?」


彼だった。


その言葉に部員たちは「ドッキリかよ」とか「喧嘩かと思ったわ」だとか、一瞬にして元の穏やかさを取り戻した。


遊びって……。


私には苦しい誤魔化し方にしか聞こえなかったが、部員にはそれが通用するほど、日頃
ふざけ合いをしているのだろうと思った。


「もう、置いてくからなあ?」


やれやれと呆れながら、部員の背中は遠ざかるばかりで、未だに足を進めずにいたのは私と理沙、伊月先輩、佐藤先輩の4人だった。


まるでそれは、彼のフォローは私達には
意味がないと言わんばかりで。