……



都内とは一変した、古びた商店街は、
どこか懐かしさを感じた。


「あんまり女子はみんなこの場所
知らないんだよな〜」


「へえ〜初めて来ました私」


興味津々に当たりをキョロキョロと見渡す
理沙に対し、中居くんはずっとその姿に
呆れ見つめていた。


「ちょっと、あんまりはしゃがないで
くれる?動きがうるさいから」


「そんな事でいちいち小言言う
中居が一番うるさい」


また始まった、と言いたいところだが、よくよく考えたら、中居くんはもしかしたら理沙をいじめたいだけなのかもしれないと思っている。


「目的地に着くまで何回転ぶんだろうね」


「転びませんから!」


それは愛故に発せられる嫌味であり、もしかしたらそれは彼なりのコミュニケーションなのかもしれない。


「ふふっ」


そう1人で思えば、無意識に笑みが溢れた。


その姿に察したのか、佐藤先輩は
私に「あ、分かっちゃった?」と
耳打ちすれば、私は応えた。


「はい、なんとなく」


きっと中居くんは理沙の事が
好きなんだろう。


そして佐藤先輩も中々の鋭さだった。


……本当、


「みんな理沙が大好きなんですね」


今日でそれを何度思ったことか、
つい口にまで出てしまい、再び微笑んだ。


その直後、強い風が私たちを包めば、
一緒に髪がなびいた。