それから、時刻はあっという間に18時を
過ぎると、午後の練習が終わった。


みんな各自後片付けに入れば、今日はどこに行こうかとか、肉がいいだとか、そんな話がちらほら聞こえた。


「伊織ちゃんは何が食べたい?」


そんな中、佐藤先輩は私にそう
問いかける。


「私ですか?…んー、特には…」


ここは控えめに、選択肢を投げると、
伊月先輩が会話に入ってきた。


「今日のメインは雨寺なんだから、
少しくらい甘えときな」


「──…、」


〝あんまり我慢すんなよ?〟


何となく、いつぞやの先輩の言葉を
思い出し、今の台詞と重ねた。


我慢してるとか…思われてるかな。


別にそんなつもりはないけど、彼も何気なく出た
言葉に違いないだろうし。


「何食べたい?」


……。


なぜかここで初めて自分のための
歓迎会である事を改めて実感した。


それと同時に、いいのかな。なんて。


なんか少し照れる…変なの。


「お好み焼き…」


そう思いながらも、私はそう応えれば、
みんなは賛成してくれた。


「よっしお好み焼き!」


「行きつけの場所を先輩が
教えちょる!」


特に部長が本当に楽しそうに言うもの
だから、つられて笑ってしまった。


「よかったね、伊織」


「うん、ありがとう」


「いえいえ」


温かく優しい空間に包まれた感覚に胸が
キュッとなって、気恥ずかしさを覚えた。


この感覚はじわじわと来るから苦手だ。
……でも、嫌ではなかった。