「へえ、雨寺が代理なんだ」


「そうです、なのに伊月先輩は
サボってるし…」


「あはは、なるほど。迎えに来たの?」


薄笑いしながら、先輩は察し応えると、
私は頷いた。


「早く戻りましょう」


私はそう言って目で訴えれば、先輩は
足を肘掛にし、頬を手に当てながら、
爽やかな笑みを浮かべ応える。


「嫌だよ」


「んなっ」


まさか断られるとは思っておらず、
間抜けな声が出た。


きっぱり戻らないって言われた…。


あまりにもニコリとして応えるもの
だから、逆に清々しいと思った。


「なに言ってるんです、佐藤先輩は
ちゃんと戻ったんですよ?」


「おー、さすが竹内」


その言葉はまるで自分は力不足だと
煽られているようで、ムカッとした。


……なんなんもう。


「昨日とはまるで大違い……」


ついぼそりと呟けば、ハッとして
口を押さえた。


その姿に伊月先輩は小さく笑う。


「確かに、御為倒しだ」


「…」


「だめな先輩でごめんね?」


悪びれもなさそうに私に謝罪すると、
先輩は立ち上がった。


「明日は行くからさ、今日は見逃してよ」


「……っ」


そこまで先に言われてしまったら、
もう出るところがなかった。


これ以上引き止めたって、きっと
伊月先輩は行かないんだろうな。


はあ……。


「…わかりました」


渋々私はそれを許せば、
先輩は私の頭を撫でた。


「ごめんな」


そう言って、伊月先輩はこの場を
去ったのだ─────。