なぜかわからないけど、
彼はあそこにいると思った。


根拠なんてどこにもないけど、
でも……、


…よしっ



今はもう頭をひねるよりも運任せに頼れば、私は5階から1階へ駆け降りて、小走りで外までやって来た。


「はあ…っ」


グラウンドに着く頃にはもう息が上がっていて、
その度に体力のなさを改めて痛感した。


芝生の独特な臭いと、その上を駆け回る
サッカー部を横目に、私は倉庫の方へ行った。


5階から一番最初に目に入ったのは、この真っ白で
大きな倉庫で、身を隠すには十分な広さだった。


早速、倉庫を開けようと扉前まで来たが……、


「あ…」


頑丈そうな南京錠で閉められており、こちらからでもそれに合う鍵が無ければ開けられないようになっていた。


そう…だよね。


よくよく考えて見れば、倉庫の中なんて土っぽいし、ホコリ漂うし、何よりあんなに真っ暗な場所、広くても居心地なんて決してよくないだろう。


そこまで思ってから、
私は旧校舎を比べ見る。


「……」


いや、大して変わらないじゃないかとハッとすれば、私は何を血迷ったのか、扉を叩きながら先輩の名を呼んだ。