その姿に、理沙は「確かに」と言えば、
再び考え直してくれた。


「伊織にはまだ刺激の強い光景は、
真尋さんの教育上よくないものね」


「…」


色々言いたい事は多々あるが、
私はそれを押し込めば、頷いた。


一体理沙は毎度どんな光景を目の当たりにしているのだろうか、日々彼女の苦労に合掌した。


「そうだな、じゃあ伊織には伊月先輩の方を
お願いしようかな」


理沙の口から伊月先輩の名が出れば、
私はピクリと反応した。


「あー、でもなあ、こっちは特定の
場所がないから、見つからないかも」


どうにも、佐藤先輩より伊月先輩の方が、部員にとって一番手に負えぬ存在のようで、連れ出すにも居場所が分からないらしい。


まったく、凛と穏やかで、確かに昨日は先輩さを感じさせられたのに、これでは台無しではないか。


そう思い、私は頬を膨らませれば、
応えた。


「いいよ、私探す」


私にあんな励ましといて、サボりなんて
させてあげません。


そう意気込む私に、理沙は一瞬キョトンと
したが、すぐにまた譲ってくれた。


「ん〜。じゃあ任せた」


「……」


その時の理沙の表情は、まるで子を見守る母親のようで、少し心配そう言ったものだから、相当自分は頼り甲斐がないのだろう。


…だったらなおさら早く伊月先輩を
見つけないとね。


…よし!


そうして、理沙は佐藤先輩を、私は伊月先輩を
連れてくる事が、私の初の仕事となった。