そう思い少し落ち込めば、私とは裏腹に、
理沙は頬を膨らませ機嫌を損ねていた。


「あの女ったらし…」


理沙がそう言えば、ここにいる誰もが
顔を苦々しくさせていた。


「り、理沙?」


私の言葉を無視しながら、今度は考え込むように
ブツブツと呟き始める。


「今度は女テニ…いやもしかして
空き教室とか……」


こんなに怒りを取り乱す彼女を私は
初めて見て、ついつい先輩に理沙を
指差しながら問いた。


「理沙、どうしちゃったんです??」


「いや、まあ、いつもの事だよ」


先輩はあははと苦笑いしながら説明すれば、どうやらサボりはサボりでも、佐藤先輩の場合、十中八九女子と戯れているそうで、理沙は毎度毎度連れ戻しに行っているらしい。


「…それはなんとも大変で」


なんて、人事のように言えば、
理沙は応えた。


「伊織、ちょっと佐藤先輩連れて来てくれる?」


「へ?」


その役目は理沙のはずだと思っていた
ために、マヌケな声が出てしまった。


「む、無理無理!」


あの何を考えているか分からない能天気そうな佐藤先輩の手に負える器を持ち合わせていなく、私は必死に首を横に振った。