「勧誘っていうか、試合が終わる間まで、
マネの仕事を伊織に頼みたいの」


「いつまで?」


「んー、2週間くらいかな」


それは勧誘というよりもお手伝いに近い
もので、私は迷った。


勧誘だったら、断ろうと思ったけど、2週間だけだし…それと言って忙しいわけじゃないし………。


「人手足りてないの?」


思い悩ませてみるが、色々聞いて
納得した上で決めたい。


「一昨日、同じマネの子が指を骨折しちゃって
しばらく部活には出れないの」


「…大丈夫?」


「うん、一応何週間か安静にしてれば治るみたいなんだけど、その間1人でサポートするのは大変だし、その代役を昨日から探してたの」


「それが私?」


「そ、伊織が一番適任だと思って」


“適任”、その言葉はあまりにも自分には
相応しくないと思った私は、大きく首を
横に振った。


「私愛想ないし、バスケのルールも分からないし、本気でやってる人に失礼だよ、適任じゃないよ!」


つい感情的になってしまった私に、理沙は
驚いたのか、小さくむせ返らせてしまった。


「っけほ、も、もう、いきなり
大きな声出さないでよびっくりした」


「あ、ご、ごめん」


私の声に何人か反応して見られた事に気づき、
恥ずかしくなって視界を手で覆った。


「なにもそんな重く考えなくたって、私は
人手が足りないから手伝って欲しいって
言ってるだけなんだけど?」


「そ、そうだけど…」


「そんなんじゃこの先慎重に身構えすぎて
何も始められないじゃん」


まったくその通りで、言い返す言葉が
なかった。