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────ピピ、ピピ…
「…ん」
朝の目覚ましが耳に鳴り響き、
私は気だるそうに重たい瞼を開けた。
大きく背伸びすれば、お兄が別荘を
後にした事が分かった。
テレビのニュース番組、フライパンに
油をひいた音もろもろの雑音。
そして何より、お兄の声がしない。
「…行ったのか」
そう呟けば、私は二階に降り、
洗面台で身支度を済ませた。
ダイニングには朝、作り置きしたのであろう
サンドイッチと一緒に手紙が置いてあった。
〝寝坊したらだめだよ〟
そうつづられた手紙をじと目して、ついゴミ箱に
捨ててしまったが、朝食はとても美味しかった。
「今日湿気強いな…」
窓を開け、そう思えば私は髪を
一つに束ねる事にした。
そして、お兄の作ったお弁当を携えれば、
私は家を出る。
まだ少し寒いな〜、なんて、
そう思いながら徒歩で学校を目指す。
微かに映える桃色の桜を見て、
次の季節の変わり目を感じながら──。