「それより、」


「?」


「明日からしばらく大学にいると思うから、
戸締り任せたよ」


「え…」


帰ってきたばかりなのに…。




お兄はよく泊まり込みで研究や論文などの
締め切りを大学で行っていた。


だがしかしあまりの頻度の多さに
私は少し俯いた。


それが嫌だと意思表示するには十分で、
お兄は私の頭を撫でる。


「仕方ないだろ?あまり兄ちゃんを
困らせないで」


その言葉はまるで、私が駄々を
こねているみたいじゃないか。


私はもう少し家族の時間を大切にして欲しいと
思っているだけなのに。


…でも本当は結局、お兄の言う通り、
ただのわがままなのかもしれない。


綺麗事を並べた言葉は放たれる事なく、
胸の奥にぐっと押し込めば、私は言った。


「わがまま言ってごめん」


そうすれば、お兄は申し訳なさそうに、
頷いてくれた。


そういえば最近、夜遅くまで何か調べ物をしたり、そのせいか、しまりのない顔をしていたり…本当にお兄はとても忙しそうだった。


やっぱり、私が家事をした方が…。


そう思い、それを口にするも、


「それはやめろ」


と、呆気なく断られてしまった。



それから私は頬を膨らませながら、
お風呂に入り、そのまま熟睡した。