〝こんな天気だし、たまにはそんな
言葉にのってもいいかもね〟


雨が降れば撮影が出来ない事を分かっていて、
あの日俺は雨寺を前にしホッとしていた。


きっと楽屋に戻るに違いないし。


でも裏を返せば、今日の仕事がなくなれば、
決まった時間に真衣は俺に会いに来ると思った。


彼女は久しぶりだというけど、実は影で
自分を監視していたことを知っていた。


彼女はモデルでもあるがご令嬢でもあるから、
たまに黒ずくめの人が監視してたり。


毎度毎度よくやるもので、その度に俺は
時間帯や位置を把握してしまった。


バレないとでも思ったのか、
俺も相当甘く見られたものだ。


…でも本当は、彼女自身も監視していることに
気づいているのを気づいている気がした。


重要なのは常に見られている事を自覚することで、浮気の防止か、あるいは監視することに意味があるのか。


何か弱みを握り、いつかそれが
切り札になるとでも思っているのだろうか。


…純粋な愛情だとしても、相手が相手なだけに、
どうしても勘ぐりしてしまう。


まあ結局、昨日真衣は俺に会いに
来なかったけど。