〝いつもそれ持ち歩いてるの?〟


〝はい、おに─…、兄が毎日リュックに
入れときなさいって〟


そんな彼女は周りから大切に育てられてきたのか、汚れの知らない綺麗でまっすぐな瞳が、俺は苦手だった。


それはとても形容しがたい感情で、
一言で言えば気が緩む。


〝バレなきゃ…
いいんじゃないですか?〟


人の気も知らずに終いには
釜までかけられた。


控えめなくせして実は好奇心旺盛で
こっち側に踏み込まれそうになる。


それはまあ毎度毎度スレスレで。


平常心を保ちつつ必死こいてガードに
入る自分がバカらしくなってきて…。


もう一周回って愛嬌すら湧いてくるものだから、
竹内が過保護になるのも分からなくもない。


だからこそ、筋を通す。


「おまたせ、柊」



それもこれも、全部は“真衣”の
ために────。