side伊月



〝自分の立場をわきまえる〟


歓迎会の日、俺は2人にそう言って
背を向けた。


何度もそうしてきたはずだったのに、
今は自信を持ってそうする事が難しい。


竹内は昔からうちの高校に遊びに来ていて、
引っ越す前は晶と俺のご近所だった。


ほとんど腐れ縁みたいなものだったから、それなりに耐性というか、対処できていたし、むしろ協力者というか、別の言い方で言えば被害者で。


だけど今年から入学した彼女の親友である
雨寺伊織が来たことで、それは狂い始めた。


雨寺は入学当初から注目を浴びていて、ついには招き猫だの猫娘なんて異名まで付けられていた。


おまけに他校にまで目を付けられるものだから、
今日なんて────…



〝そんなやり方でうちのマネージャーの
気を引きたいの?…殺すよ〟



なんて柄にもなく耳元で相手を脅し
雨寺を庇った。


毎度毎度マネージャーが増えるとこういう事も
多々あるから、制裁する俺たちも大変だと思う。


今日はそれがたまたま俺だったのだ。