聞き覚えがあるが、しかしドスの効いた声に、
私は肩を強張らせ彼を見た。


い、伊月先輩…。


伊月先輩は、2人の行く手を阻むと、
そう言った。


そして、何か彼らに耳打ちすると、彼らの表情は一変、青ざめ始め、そのまま練習に戻って行った。


「……」


一体なにを言ったんだろう。


その後、先輩と目が合うと、口パクで大丈夫か
問われたので、コクコクと頷く。


すればまったく世話を焼かせると言うような呆れた顔をされ、先輩もまた、練習に戻って行ってしまった。


「……なに…」


なんだか嵐が過ぎ去ったような展開についていけなく、呆然とすれば、理沙が駆けつき私を呼んだ。


「伊織!大丈夫!?」


「あ、うん」


「なんなの、あの先輩たち…悪質」


「……」


何か自分に至らぬ点があったのか、
もしくは単に気にくわないのか…


まあ、どちらにしても気分が悪くなる。


「はあ……、先輩怖すぎ」


私はそう言いため息を吐けば、
理沙は苦笑いした。

「たまにいるんだよね」


「理沙も何かされた事あるの?」


「まあ思いっきしガン飛ばして
やったけど」


流石姉御、抜かりない。


まあとりあえず、伊月先輩のおかげで
また嫌な思いをせずに済んだから…


「後でお礼言わないとね」