「バレなきゃ…
いいんじゃないですか?」


…なんてね。


そう言うと、先輩は目を見開き
私を見た。


「……」


その言葉は意味深で、まるで彼らの秘密を
知っているような、かと思えば実はカマを
かけているような。


あくまで案として述べたが、
それは脅迫のようで。


なんとも色んなことを考えさせられる
言葉に、先輩は呆れた顔をした。


「実は雨寺って悪い子?」


「…何のことですか?」


とぼけたように言う私に、
先輩は一つデコピンをかました。


「いたっ」


「キャラじゃない事するからだろ」


「うぅ…」


まあ確かに、今のはずるかったかも。


そう思い、途端に反省すれば、
先輩を見た。


相変わらず方杖にガラス張りの
向こう側、雨を眺めていた。


「…」


「…」


「でも、まあ…」





「こんな天気だし、たまにはそんな
言葉にのってもいいかもね」


目線は変わらず、ただただ落ちゆく雨に向かい、
先輩はそう言えば、私は一瞬驚いた。


そして目線を私に戻した先輩は、
妖しく笑って見せたのだ。


先輩も大概悪い人だ。


なんて、何が悪いかも知らずに心に
そう呟けば、加えて応えた。


「ついでに言えば、
土曜日程ですしね」


「休日の学校は本当に萎えそー」


なんて、その言葉で一気に他愛ない話に持ち込めば、雨が止むまで会話を繰り広げた───。