勇香は大きく息を吸ってから話始めた。

勇香「市松組ってしってますよ、ね。」

和希「ああ。そりゃ。あれだけの暴力団だったら、」

勇香「私は市松勇香なんです。
市松組の娘なんです。
私、年が離れた姉と姉の夫の義兄がいて。今は、私のお爺ちゃんが当主で、
お爺ちゃんずっと私を可愛がってくれて。
そのお爺ちゃんが末期がんなんです。
だから、本来ならお父さんか義兄が次期当主になるところをお爺ちゃんが私を次期当主にするといったんです。」

勇香「それ、で、、、」

勇香はそこまで言うと呼吸が荒くなり、大粒の涙が落ちた。
俺はいてもたってもいられなくなって、
勇香を抱き締めた。
勇香は俺に抱き締められたまま、続けた。

勇香「そ、れで、、、。私は、、言われるがままに、当主に、、なるんだって、思って、、、お父さんや兄さんがなに、、、考えてんのか、、、知らなくって、、、、。あの日、、、」

勇香はつっかえながら、話す。
俺のTシャツをつかむ勇香の手のちからが強まった。

勇香「お父さんの、、、へやに呼ばれて、、、お父さんが、、、やれ、って低い声で、、、いって、それで、お父さんの横にいた、、、人がナイフ出して、それで必死に逃げて、、、お屋敷から飛び出して、、、それで、、、。」

和希「わかった。そういうことだったのか、。」

勇香「嫌われたくない、、、。」

和希「親父さんにか、?」

勇香「ちが、、、。明利さんにも、大翔さんにも、和希さんにも。」

俺は無意識に勇香を抱き締める腕を強めた。

和希「なんで、嫌うんだよ。
明利とか大翔だって、
お前の事本気で可愛がってんじゃんか。
たった2ヶ月だけど、もうお前は家族みてーなもんなんだよ。」

勇香「和希さん、、、、。」

和希「なんかあったら、俺ら全員で守るから。」

勇香の泣きがヒートアップした。

それから、どんだけ時間がたったんだろうか。
辺りが暗くなり始め、風が吹き始めた。
勇香が顔を上げた。目が真っ赤に充血し顔も真っ赤にしている。

和希「そろそろ、帰るか。明利にしかられるな(笑」

俺は勇香を抱き締めていた腕を緩めた。
勇香は頷いた。

和希「ちゃんと話してくれてありがと、」

俺がいうと、勇香は頷いた。

和希「てか。ひでー顔(笑」

勇香「ひ、ひどい!」

勇香はさらに真っ赤になり、
充血した目でにらんでくる。
そんな顔を俺にとってはいとおしかった。