「うん、俺は彼女いねー」



あたしの言葉にもう一度、その言葉を言ってくれる。



「……よかった」



自分でも、気が付かないうちに口にしていた。
自分の気持ち。



「お前……」



浩ちゃんの目がだんだんと見開いていく。



「あっ、なんでもな……い」



すぐに浩ちゃんに背を向けようとしたあたしを引っ張って、後ろから抱きしめられる形になる。



「俺、言ったはずだよ。お前のこと好きだって」



耳元で囁かれて、吐息がかかる部分が熱くなっていくのがわかる。



「そんなの、あたしが逃げて悔しいからだって思ってた」


「んなわけあるか。俺は情けないほど未練がましい男だってここ数年で思い知らされてたとこ」


「……浩ちゃん」



あぁ、だめだ。
あたしだって、嫌になるくらい未練がましい。