「ごめんね、言ってなくて」



別に言ってもよかったんだ。
でも、大ちゃんが尊敬しているっていう浩ちゃんのこと。
簡単になんて言えなかった。



「いいよ、別に。俺ちょっと挨拶してくるから」



あたしに顔を向けずに、大ちゃんは大物俳優たちが集まるところに歩いていった。



「……っ」



どうすればよかったんだろう。
言っておけばよかったんだろうか。



「あーあ。せっかく京香ちゃんが言いそうなの阻止したのに。田城さんのせいで台無しだなぁ」



頭上から能天気な声が聞こえる。



「なんで?あたし、小杉くんに言ってないよ?」


「うん。聞いてないよ。ただ、なんかあるんだろうなって思っただけ。さっきなんか様子おかしかったから。きっと大輔に知られたくないんだろうなぁって」