「会ったことなんて……あるわけないですよ」



あたしは、芸能人と関わるのは大ちゃんがはじめて。
はじめてだと言い聞かせる。



「んー、なんか会ったことある気がするんだよなー。どこでって言われると思い出せないけどさ」



はっきりとした記憶ではないことに安堵する。

はっきりとした記憶だったら、バレてしまうから。
彼とあたしの関係を。



「あれ、浩一から電話だ」



田城さんがあたしに片手を挙げて、去っていく。


「浩ちゃんから……電話」



さっきから名前が出てくるだけで本当に体が熱くなる。
別れてから随分と時が経っているのに。
あたしの記憶からはいなくなってくれない。



「愛ちゃん、ごめんね。あれ?田城さんは?」


「なんか、白崎さんから電話きたとか言ってあっちいったよ」