「何か、機嫌悪いですか?」


近くの小会議室に連れ込まれて、ようやく掴まれていた手が離れた。


「いや」

否定しているようだが、視線を外す態度は明らかに何かあるように見える。

「こんな事したら、みんな不振に思いますよ」

「大丈夫だ、部長には話を通してある」

『ホントに大丈夫なのかな』

一番下っ端の自分を指名するのは変に思われるのでは?と首を傾げていると凱はそのまま話を続けた。


「コレなんだが、今朝見たらアプリ?アイコン?が消えていて・・・」

胸ポケットからスマホを取り出し杏奈に見せる。

「どのアプリですか?」

「・・・メッセージ・・アプリ?・・・」

良く分からないからかそう言って、グイっと顔を寄せてきた。

『近いって!なんでいっつもこんなに近いの?!』

飛びのくように後ずさる杏奈を不思議そうに見た。