「え?」

鈴木の視線の先には、このフロアに居る筈のない、凱の姿があった。

「が・・・取締役?!どうして?」

「随分楽しそうだな」

「おい、小鳥遊、仕事に戻るぞ」

無表情に見えるが、杏奈には機嫌が悪い事が分かったので、鈴木の言葉で勢い良く立ち上がり、後に続こうとした。

「はい!・・・!?」

凱の横を通り過ぎようとした時、不意に腕を掴まれ、驚いて固まってしまった。

「が・・・神宮寺・・取締役?」

今の状況にテンパってしまい、何度もいい間違えかけて言い直す。

「部長には小鳥遊を借りる事を伝えてある」

「え? えぇ! ちょ・・」

鈴木も凱の行動を不振な目でみていたが、凱は、構わず杏奈の手を引いて休憩所を後にした。