「だって、みんな見た目と中身が違うって、詐欺だって・・・」
この前から、当時を思い出すと自分ではどうしようもなく、胸が苦しくなり、心臓がギュッと握られたようになる。
今も耳鳴りがして息が苦しくなって手が振るえる。
「あぁ、若い時は相手を認められなくて、全否定するかもな。
でも、俺たち位になったら、相手の事を認められるようになるもんだろ。」
そんなものなのだろうか?疑心暗鬼になっている杏奈は、鈴木の言葉に素直に頷けない。
「まぁ、全員が出来るかって言うとそうでも無いだろうけど、少なくとも俺や山葉はお前の事認めてるから」
そう言って、杏奈の頭をクシャクシャと乱暴に撫でた。
「まぁ、出来るヤツは器も大きいって事だ」
更に勢い良く頭をかき回しながら自慢げに話す鈴木を見て、やっとホッとした顔をする。
「ちょっと!鈴木さん頭かき回すのやめて下さい!髪がぐしゃぐしゃになります!」
「えぇ、お前の撫でるの、わんこ撫でてるみたいで好きなんだよ」
「酷い!わんこって何ですか!」
大きな声で言い返すが、頭を撫でる手は止まらず、暫くじゃれあっていると、不意に鈴木が手を止めた。
「あ、神宮寺・・取締役」