日曜から、週に2・3回、神取の道場に通うようになり、リズムも戻って来た。

仕事も順調で問題無い筈なのに、杏奈の顔は曇っていた。

「何しけた面してんだ?」

仕事が一段落したので、フロアにある休憩スペースでコーヒーを飲んでいると、声をかけられた。

「鈴木さん」

鈴木も自動販売機でコーヒーを買って、杏奈の向かいの席に座った。

「そういやお前、ブラック飲むんだな」

「え・・あ、あぁ!これは間違って押したんです」

『ヤバイ、何時もは会社では微糖を買うのに、無意識にブラック買ってた』

微糖でも甘くて余り好きでは無いので、極力会社ではお茶を買っているのだが、たまに無性にコーヒーが欲しくなる時がある。

そういう場合、周りに人が居なくても、念には念を入れて微糖にしている。

微糖だと、「意外だな」と言われた時、「ちょっと気分転換に」等と誤魔化す事が出来るからだ。

なのに、今日はブラックを買ってしまい、そんな時に限って同僚に会う。