「同情じゃない。本当の事だ。俺からしたら凄く助かる」

「でも、料理も出来ないですし、大食いです」

「今は男が料理をしても良いだろ。料理好きの男なら、沢山美味しく食べてくれたら嬉しいし」

『そんな都合のいい男の人って居ないよね。』

今まで付き合った男性を思い返しても、プライドが高く、自分より強くて、電子機器に強い杏奈を全否定していた。

「見た目と違う」という言葉だけではなく「女の癖に男より強いって有り得ない」「実は男だろ」等と言われた事を思い出してしまい胸が苦しくなった。

「杏奈?」

「! すみません・・・考え事してました」

「顔色が悪いな・・。夜景は止めて置くか?」

嫌な思い出がグルグルと思い出され、冷や汗が出て気持ち悪くなった。

随分昔の事なのに、未だに思い出すと苦しくなる。

「ちょ・・と。お手・・洗いに」

フラフラと立ち上がって化粧室に向う。