今までこんな風に過ごせる男性が居なかった杏奈は、嬉しくて仕方がなかった。
杏奈がお腹がなった事を気にしないように、ワザとデザートの話をしたのだろう。
いつもなら、食後はコーヒーを飲んでお仕舞いだった。
『もう、こんな良い人見つからないよなぁ。』
凱の優しさに胸が熱くなった。
杏奈は少し前に食べたとは思えない様子で、カツ丼を食べていて、その傍らでは凱が期間限定桃と葡萄パフェを食べている。
店員が料理を持って来た時は凱の前にカツ丼、杏奈の前にパフェを置いた。
これが当然の反応だと、二人は苦笑しつつ取り替えた。
「美味しいですか?」
あまり表情の変らない凱を見て、ふと呟いてしまった。
「あぁ。食べるか?」
「いえ、私、甘い物が苦手なんです」
「そうか」
特に気にした風も無く、続きを食べ始める凱を見てホッとした。
「良かった、気分を害して無くて」